目を奪われるあざやかな赤色が特徴。
果皮の色が淡いピノ・グリでここまでの色が出せることに驚かされます。
これは果皮と果汁を数日〜数週間接触させるマセラシオン（醸し）によるもの。
近年用いられる炭酸ガス注入による嫌気的なマセラシオン・カルボニックは
色素をすばやく抽出できますが、自然にこだわるジョン・ベッカーはこれを嫌い、
酸化防止剤の添加もなし、伝統的なマセラシオンの技術のみで美しい赤色を作りあげています。

味わいは辛口。口にふくむとポリフェノール感を帯びたパワフルさに驚き、
どんなお料理に合わせようかと期待が膨らみます。
泥灰土・粘土石灰の土壌由来のタンニンと塩気を感じさせます。
赤い果実、柑橘やシロップ漬けフルーツのニュアンス。スパイシーでかすかな樽香も。

ジョン・ベッカーによると「夏に欠かせないワイン」とのこと。
なめらかな口当たりですが弱すぎず、強すぎず、様々なお料理やシーンにマッチします。






　
■有機農業とジョン・ベッカー
ブドウ栽培に関連する気候と環境の問題を認識していた現当主の三兄弟は1980年に持続可能な農業への一歩を踏み出します。化学物質の投入と処理の使用を制限し、1999年には全面的な有機農業へ。2001年以降はすべての区画がEUのオーガニック認定をクリアしました。

主な取り組みとしては樹液の流れを尊重した剪定、自家製の堆肥、穀物やマメ科植物をベースとした緑肥の使用（大気中の窒素を捕まえ自然と腐葉土が生成される）、化学除草剤の使用禁止、浅い耕作と草刈りのみの手入れ。樹が持つ生命力を信じ活かし、自然に寄り添ったブドウ栽培を行っています。

自然に寄り添うというのは放置ではありません。どう自然に寄せていくのか、造り手の知識は欠かせず、地質学、気候、ブドウ栽培、ワイン醸造と多岐にわたります。ジョン・ベッカーはすべての知識を組み合わせ、テロワールやブドウ品種の特異性を反映したワインをリリースしています。

■アルザスと生きるジョン・ベッカー
ますますバイオダイナミック農法の実践に近づくジョン・ベッカー。ヨーロッパでも地球温暖化は深刻ですが彼らはそれすらも受け止め、南フランスに由来するブドウ品種シラーの植え付けを行いました。伝統的なブドウ品種、テロワール、グラン・クリュを超え、アルザスワインに新たな視点をもたらすことを目指し、日々挑戦しています。

■畑情報
ジョン・ベッカーが所有する畑の中で最も石灰のニュアンスが強い粘土・泥灰土質土壌の
グラフェンレベン（Grafenreben）のブドウを使用。
樹齢は30年。植樹率は1haあたり5000本。
土壌作業は耕作、堆肥作り、草刈り。ボルドー液（有機農法での利用が許可されている自然に優しい殺菌剤）、硫黄、ハーブの煎じ薬、藻類エキスなどを必要があれば使用。
ブドウ収穫は手作業。

■醸造法
まずステンレスタンクにて熟成。
丁寧な除梗後、果皮とともにマセラシオン（醸し）。アルコール発酵が終わりきる前に圧搾。
マロラクティック発酵ののち一部はオーク樽で6ヶ月間熟成。
ノンフィルター、濾過なし。酸化防止剤無添加。
●アルコール度数13.2％　●残糖率は低く、1Lあたり0.7g

(写真右上がグラフェンレベン）

飲み頃温度は8〜12℃。2〜3年、フレッシュなうちにお飲みください。

前菜、魚のグリル、ソースをかけた魚料理。鶏、鴨、ウズラなどの肉料理ともよく合います。

■ジョン・ベッカー（Jean Becker）
1986年、カリテ・エ・プリが初めてワインを輸入した記念すべき生産者。創業は1610年。ドイツとの国境近く、アルザス地方のゼレンベルグ村の家族経営ワイナリーで、ベッカー家はアルザスのブドウ農園で最も古いファミリーのひとつです。先祖から受け継がれたノウハウと大地の恵みを子供たちにも受け継いでいきたいという想いから、1999年より有機栽培へ切替。
彼らのワインは凝縮感がありながらも透明感のある美しい味わいが特徴。初めて輸入をした時から今も変わらない高品質さで、いつ飲んでも「やっぱり美味しい！」と新鮮な感動を与えてくれる大好きな造り手です。
ジョン・ベッカー公式ホームページ


(写真はベッカー・ファミリー）
醸造担当のジャン・フィリップ、葡萄栽培の専門家フランソワ、営業担当のマルティーヌの３姉弟。